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昔日本には「美人鏡」なるものがあって その名の通り女性を美人に見せる鏡なんだけど ようはただ曇ってるだけ 曇った鏡のこと
輪郭やパーツをぼんやりと映すから えらいブスでもそこそこ綺麗に見えるって奴だね
今で言えば撮影技術の「飛ばし」みたいなものなのかな?
とにかくそんなものは悲しくも鏡の中だけにしか存在しないんだ
今のように街中いたるところに自分の姿を映すようなものはなにもない 美に勤しむ女性の鏡台の中に美人鏡があったその時代 その美人鏡を覗き込みながら そこに映る自分が本当の姿だと思っていたのか 或いはそこに在る自分だけが慰みだったのかどうか あたしにはわかんない それでも間違いなく美人鏡は存在して きっと多くの女性がそこに映る自分を見ながら 色んな溜息を吐いたんだろうね
しかし時は2006年 もしもあたしのドレッサーの鏡が曇ってたら たぶんファンデーションはムラだらけ シミくすみ全開 毛穴も全開 目の隈もそのまんま アイラインも眉毛も左右バラバラで 入れすぎたチークでセキセイインコみたいな顔になって どっか遠くへ飛んでく自信がある
最悪の場合顔の産毛やムダ毛を公衆の面前に晒すことになりそうだね もちろん自分は全く気付いてないという物凄い事態に
毎朝下地で念入りに毛穴をカバー 夏にはウォータープルーフのファンデーションで汗をカバー 睡眠不足の祟った目元には舞台用コンシーラ 長電話をしながら眉毛をプチプチ どんだけ激しいセックスしたってあたしは平気! むしろ滝に打たれたって全然平気! パンダ目ってなに?ってこのご時世に 曇った鏡の向こうの自分にうっとり溜息吐いてる時間なんてない
昔の女っておめでたい
女性は1日鏡を見ないだけで表情が曇るんだそう 1週間も鏡を見ないと明らかに顔が変わるんだそう
鏡を覗き込むその行動に女性の美しさがあると 齋藤薫女史がいつだか言ってた
舞台裏の鏡の前で大量のポンズのクリームを手に 必死にメイクを落とす姿 こういう光景を小さい頃にずっと見てた
鏡の前で化粧をする姿も裸になっていく姿も どちらもその先に美というものがある
だから女性は鏡を磨く 自分としっかり向き合うために
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